ビニールクロスの健康被害・環境問題について。

塩化ビニールの壁紙

現在、どの住まいにも、必ずと言っていい程に使用されているビニールクロス。
このビニールクロスの危険性・有害性をご存じの方は、実際には少ないかもしれません。
国土の70%近くが森林である日本。森林国でありながら、使用されている壁紙のうち、塩化ビニールのビニールクロスを95%も使用しているのは、世界先進国の中でも日本だけだそうです。
ビニールクロスの壁は湿度の吸収・排出の呼吸をしないため、特に冬場は、結露が発生し、暖房でカビが発生します。
その発生したカビの胞子は、室内にただよい、喘息やアレルギーの原因となります。

ビニールクロスの特性

ビニールクロスは、熱分解すると、塩素やダイオキシンのような有害な有機塩素化合物のガスを大量に生成するため、もしもの火災時には非常に危険です。
更に、ポリ塩化ビニールは、製造、使用、廃棄の過程でも、環境や人体に開題を起こしています。
製造工程では、発ガン性があるとも言われる塩素ガスが大量に使用され、又、熱分解により、酸性雨の原因となる塩素ガスを発生するのです。

最近では、酸性雨によるものと見られる森林の立ち枯れや、駅前広場や公園などのブロンズ像・大理石等の被害も多くなってきています。
また、その他にも、ビニール製品には、生殖毒性や発ガン物質を持つ成形加工性を改良し、柔軟性をもたせる可塑剤が20~50%も含まれています。

ポリ塩化ビニールの加工の際には、変色や熱分解を防止するために、神経毒性を有する鉛を含む安定剤や、イタイイタイ病の原因物質でもあるカドミウムを含む安定剤を添加した製品もあり、注意が必要です。また、ビニール壁紙を貼る際には、下地調整剤として、シーラー、パテ、コーキング剤、接着剤、防カビ剤等を使用していますが、それらがどれだけ安全かという疑問も残ります。

2003年7月1日に、シックハウス対策に関する法令が施行されましたが、基準値が定められましたが、放出がゼロになったのでは無く室内濃度基準が、0.08ppm(*1)の範囲ならホルムアルデヒドの放出は大丈夫となりました。
人それぞれ、個人差があるため、化学物質過敏症の方のように、基準値以下にも反応する場合は気の毒です。
更には、火災や焼却によっては、ケタはずれに強い致死量を持つダイオキシンを発生させます。
避難時のダイオキシンの吸引により死亡することが多いとまで言われています。
ホルムアルデヒドは致死量以下でも、体内にはいると肝臓障害や皮膚障害、免疫障害、奇形の発生、生殖障害などの様々な毒性を示すのです。

日本では、1984年、厚生省では、ダイオキシンの暫定的な安全評価基準を1日あたり100pg/kg(体重)に設定していましたが、1999年11月に耐容一日摂取量(TDI)(*2)を、4pg(*3)-TEQ(*4)と設定しました。
ドイツは、ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)目標値を、90年代初めから一貫して1pg-TEQとしており、WHO欧州地域事務局では、1~4pg/kg、アメリカでは更にそれ以下であり、日本では、許容藍ギリギリのレベルである摂取量の厳しい規制と、発生源の除去が大きな課題でしょう。
ドイツ・ベルリン市では、ポリ塩化ビニル等の火災時や焼却処理時に払う環境汚染に対するコストを「隠れたコスト」であるとして、公共建築での使用を禁止しています。

参考:各国におけるダイオキシン類耐容一日摂取量と実質安全値(※1)(朝日新聞:1999年2月22日)

では、日本はどうでしょう?

日本では、幼児・園児が過ごす保育園をはじめ、幼稚園、学校、それどころか病を治すはずの病院などの診療施設、免疫力が衰えてきた老人ホームなどの老後施設でさえも.床は塩化ビニール製のシート材、内壁・天井は塩化ビニールクロス、あるいは有機溶剤を使用したペイント塗装といった公共施設や医療施設などが、至る所にあるのが現状です。

いくら建築時の工事コストや価格が安いといっても、火災時などに発生するダイオキシンの問題や、日本は、地震や台風などの自然災害が多い国で有ることは誰でも認識していることですが、被災後の家具や内装材等が土に還らない廃棄物の場合は、その回収費用やリサイクルできない製品の廃棄処分費用を用を考えると、環境に対して最も高いコスト負担になることは明らかです。

日本の住宅の建物寿命は、1996年(平成8年)の建設白書によると、日本26年で、アメリカは44年、イギリスは75年とのことで、一般的なご家族が、人生最大のお金をかけて建てた住まいが、ローン期間の25~30年という年月よりも短いことに驚かされます。
そして、短い期間で立て替えざるを得ない住まいから出る産業廃棄物が、土に還ることのない建材「ポリ塩化ビニール内装材」は、実際に、大きな地震や台風、水害が発生し、住宅家屋に被害が発生する度に、膨大な量の産業廃棄物の処分に困って、災害発生地の公園やグランド施設などを埋め尽くしています。
土に還らないために、ダイオキシン対策のされた焼却炉で処理するために、長い年月が掛かってしまいます。自分達で犯した過ちは、自分達に返ってきます。
私たちは自分の子供や、孫の時代に与える影響の大きさを想像し、住まいの建材を考えなければいけません。私たちは、人間という動物です。化学物質に強い生き物ではありません。

だから、私達、スズキ建築設計事務所では、亜麻仁油などを原料とした自然塗料、そして、越前和紙・玉紙、自然素材クロスなど、非塩ビ、脱石油化学の壁紙・クロス、しっくいやシラス壁などの左官壁、国産木材の内装板材などの住む人達の健康に悪影響を及ぼさず廃棄する時はリサイクルや土に還る自然素材の建材を自信をもってお薦めしています。