知識の泉

化学物質による室内空気汚染

人間は人生の90%を閉じ込められた屋内で過ごします。従って、この居住空間を快適に構成するために、努力することは、住まいづくりに係わる人達の義務だと思います。そして、快適さは勿論、私たちが住む地球や周辺環境にも配慮した住まいづくりでなくてはならないと思っています。住まいは人間にとっての自然の最も重要な部分です。

しかし、その住まいが、私たちを蝕むようになって来ているのが現状です。新築のマンション、アパートや住宅、あるいは、店舗や会社…。新しい事務所などに移ったり、勤務し始めた途端に目が充血し、喉がヒリヒリする人や、めまいや頭痛に悩まされる人が増えて来ているのです。

建築資材、建材、ビニールクロス等の接着剤、塗料、あるいは新築時に購入する家具などには、ホルムアルデヒドに代表される化学物質が含まれており、それらが気化して室内に流れ出しているのが主な原因になっています。日本の新築住宅、特に、築後3ヵ月後のホルム・アルデヒドの濃度は、200~380ppbとアメリカの一般住宅70ppbと比較して、3~5倍の数値を示しています。

(公害と対策、21巻、p878(1985):regul.Toxicol.Pharmacol.誌、8巻、p356(1986))

ホルムアルデヒドは肝臓癌、前立腺癌、膀胱癌、脳腫瘍などが報告され、IARC(国際がん研究機関)では、グループ2Aの発がん物質に指定されています。

私たちの回りには、石油製品や人工化学物質が溢れています。空気中の汚染物質、食物添加、残留農薬、抗菌、防虫等の薬品処理された素材、化粧品や洗剤、殺虫剤、そして薬品類など、これらの普通は無害であったり、低濃度の基準以内の範囲内で使用されている物質が、一部の人達に原因不明の慢性病をもたらしたり、あるいは、長い間に影響があることが問題になって来ました。化学物質過敏症や、化学物質アレルギーと呼ばれる症状は、アメリカの臨床医、セロン・ランドルフ博士が40年以上も前に、注目し始めたのです。

私たちの住む日本では、臨床環境医学会が、つい最近の2年前に設立されたばかりです。日本では、「他の国で問題になってからしか取り上げない」とか、「実害が多く出て、社会問題になってからでなければ…」となどの、問題が発生してからという様な傾向があるようです。

化学物質過敏症とは、今までは、危険だと思われなかった低濃度や、基準以内の範囲内の濃度でも、農薬や化学物質に反応し結膜炎、めまい、立ちくらみ、のどの痛み、耳鳴り、難聴、鼻粘膜の炎症、そううつ頭痛、睡眠障害、不整脈、狭心症、白血病・赤血球の減少、じんましん、アトピー性皮膚炎、甲状腺異常、慢性疲労症候群、胃腸障害、喘息、肝機能障害、筋肉痛などの症状が発生し、ある化学物質に対して過敏症になった場合、他の化学物質に対しても過敏症になり、多発性化学物質過敏症になるといわれています。

これらのことは、特殊な人達にだけ起こるのではなく、日本人の10人に1人が化学物質過敏症になっているとも言われています。化学物質と別の化学物質が勝手に、他の化合物を造ってしまうという厄介なことも起こっているようです。

室内化学物質の汚染源
部位または建材問題になっている化学物質
木材(特に輸入材)
押入
防虫剤、白蟻防除剤、防腐剤、CCA注入剤(ヒ素、クロム、銅)、くん蒸処理の臭化メチル、ベニヤ板の接着剤中のホルマリン(ホルムアルデヒド)、石膏ボードのラドン白蟻防除剤、防腐剤、防虫剤
床下防カビ剤、難燃剤、発水剤、接着剤中のホルマリン(ホルムアルデヒド)
ビニールクロスラドン
クロス下地の石膏ボード防カビ剤、有機溶剤、シンナー
塗料防かび剤、難燃剤、発水剤、接着剤中のホルマリン(ホルムアルデヒド)
塩化ビニール製ドア防かび剤、難燃剤、発水剤、接着剤中のホルマリン(ホルムアルデヒド)
クローゼット、造り付け防カビ剤、防虫剤、接着剤中のホルマリン(ホルムアルデヒド)
塩化ビニール製内装部材防虫剤、防かび剤、着色剤、ダニ除け用農薬
防虫剤、着色剤
押入、物入れ(合板)
天井、プリント合板
ホルムアルデヒド(接着剤)
蚊取り用品防虫剤
タンスの防虫剤消臭剤、香料
消臭用品難燃剤、接着剤中のホルマリン(ホルムアルデヒド)
カーテン、カーペット防虫剤、抗菌剤

このように、私たちの、身近かな場所に化学物質や有害物質は溢れています。虫や細菌に毒ということは、人間にも毒である可能性が高いことを忘れないで欲しいのです。

住まいは、化学物質の問題だけではありません。人工的な快適環境を私たちが求めるあまりに、一旦室内に進入したものや内部で初制したものが、部屋に蓄積されることになったり、エアコンが設備された住まいでは、窓を空け換気をすることが極端に少ないのです。

それは、電気はクリーンなエネルギーで、部屋の空気はコントロールされていると思っている人が多いのです。エアコンのフィルターは、人間の為のものでなく、機械の熱交換の部分にホコリが付き、熱交換効率が低下するからで、機械にとって必要なのです。

機械の内部には、カビなどの微生物が繁殖しやすく、スイッチを入れるとそれらが部屋にばらまかれ、部屋の空気を暖めたり、冷やしたりしてかき混ぜているだけです。冷暖房は発汗作用が少なくなる為、私たち人間の人間の新陳代謝が低下します。そのため、最近、虚弱な子供が増えているといいます。外で遊ばない、暑さ、寒さを感じさせない生活では、子供達や私たち大人までもが、皮膚と呼吸器を弱めてしまうのです。

高齢者についても、冷暖房の完備された部屋においては、刺激が少なくなり、運動利用が減るため、急速に弱っていくケースがあるといいます。設備によって人工的に造られた「快適空間」は、私たちの体をじわじわと蝕んでいます。

呼吸をしない、ビニールクロスや合板建材の室内、朝起きれば結露がびっしりエアコンや、暖房器具により、室内温度が20℃前後に保たれれば、さらにカビが繁殖し、ダニも同じように繁殖します。

高気密、高断熱、省エネルギー、そして、人工的な空調や、換気装置…更に、保湿力のない室内建材、吸湿・放湿性の少ない建材、このような住まいは、はたして健康に良いのでしょうか?更に、高層住宅の場合、高層階ほど流産率が高いというデータもでています。

東海大学の逢坂先生によると、結婚してから第一子が生まれるまでの経過年数を調査したところ、1~2階は1.5年、3~4階では2年、6階以上は、2.4年という数字がでています。さらに、6階以上に住んでいる人には、その前に流産している人が多いということです。流産は染色体異常が原因で発生することが多いようですが、明確な原因が分らないようですが、事実であることは間違いがありません。環境が人間という生物に与える影響の現われのひとつです。

住まいは、完成すると同時に、劣化の道を辿り、いずれは、長い年月の末、解体され、廃棄される運命にあります。住まいを計画するときに、壊す時のことまでは誰も考えないでしょう…。ですが、日本の1991年度の廃棄物の量は、年間約4.5億トン、国民一人当たり3.7トン、が1年間に排出される量です。

このうちの廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に分けられ91年度の総量は、44,877万トン、そのうち産業廃棄物は、19品目合計で39,500万トン、一般廃棄物は、5,077万トン なので、産業廃棄物は、全廃棄物の約88パーセントを占めています。ひと頃には、90パーセントを越えていた事もあるのです。種類別の排出量では、汚泥がトップで16,867万トン、動物の糞尿が、7,732万トン、建設廃材が、5,843万トンで、鉱砕、金属屑の順です。汚泥、動物糞尿は、主として、農業から出るが、ほとんど自前で処理され、鉱砕も製鉄所、精練所内に処理場を持っているところが多く、主として、生産現場で処理されています。

そこでとかく問題になるのは、建設関連です。今では、産業廃棄物問題 = 建設廃材といえる程です。警察庁によると産業廃棄物の不法投棄は、82年の510,200トンだったのが、95年度で145万トンに達しています。その上、開発途上国への輸出や、海洋投棄なども行なわれており、このままでは、国際的にヒンシュクを買うことになりかねません。

バーゼル条約によって、廃棄物の国外への移動が規制されています。海洋投棄も、ロンドン条約(廃棄物投棄による海洋汚染防止条約)の改正で、96年度からは、一部を除いて禁止されます。

建設省によると建設廃棄物の量は、西暦2000年度には、90年度の1.6倍に膨らむとしています。日本開発銀行も、 「建設系廃棄物の発生予測とその対応策」 という題のリポートで、今後ビルや、住宅の取り壊しや、建て替えが相次ぎ、2020年には、建設系廃棄物の量は、約3億トンになると試算しています。

このままでは、ますます、山や海への不法投棄が増える可能性があるでしょう。地球は46億年前に誕生してから、二百万年前に人類 (類人猿) が誕生するまで、全地球の、生涯の99.95パーセントの長い時間をかけて、ようやく人類が住める環境が出来上がってきました。

こともあろうに、その人類の進化した現代人が、地球を破壊する主犯となっています。自由主義、自由競争、資本主義という、競争経済のなのもとに、環境を破壊し、人類を含めた生態系を脅かしてまでも、利潤追及をしているのです。

総理府の調査によると日本の住宅の建て替え年数が15~20年と言われているようです。更地にではなく、既存の建物を、解体撤去して新しく建てる「建て替え」のケースが増えています。

スクラップ・アンド・ビルドの動きはなかなか止まらないだろうし、さらに長期的に見ても、この傾向はますます強まっていくと予想されています。

私たちは、コンクリート、鉄、ガラス、アルミ、そして、プラスチック、・石油化学物質が「土」や「木」や「石」といった自然素材にとって変わられてしまっていることの意味について考え直さなければなりません。生物としての人間の環境材として、どのように改善、改良すべきか、また工・構法によってどのように改善できるのかを、この辺でじっくり考えて見るべき時に来ているのではないでしょうか?

そこで私たちは提案します。自然素材「木」を豊に使った「自然の恵みあふれる住まいづくり」を、…その「木」が、国産材であれば日本の国土の緑化に、治山に、さらに水資源にも貢献するはずです。

なぜ、自然・天然素材の「木」でなければならないのでしょう?答えは、私たち人類が誕生した200万年前からともに歩んで来た、もっとも身近かで馴染み深く、私たちになくてはならない、資源であり、素材であるからです。

「木は人間なしでも生きられるが、人間は木なしでは生きられない」この言葉のように、私たちは、人間という生物であり、人類の歴史の大半を森林という自然の中で、生活して来たのです。人間の方が偉大な自然の一員なのです。日本の家屋に新建材が登場してから、半世紀も経っていないのです。

私たち人間の身体は、自然からもらい受けた、自分の身体を守る自衛本能があります。現在の日本の住まいに使用される建築資材は、石油化学物質で作られた建材が大半であり、さらに、農薬や、殺虫剤などの混入された建材、化学薬品の接着剤、有毒ガスを発生する建材など、人間が長い歴史の中で、今まで細胞が接触した経験のない化学的に作られた物質に対して、当然、有害物質として判断するのです。